税金対策の相談事例と対処法

  • 当社は3月決算法人ですが、1月、2月と予想外に売上が大きく見込める状況です。
    何か良い節税策はありませんか。
  • 想定がいの売上(利益)には、事業年度を変更して課税を繰り延べることが出来ます。
    個人事業者の場合は、暦年課税(1/1~12/31)と決まっておりますが、法人の場合事業年度は定款において「変更」することが出来ますので、想定外、予定外の売上(利益)が計上される場合には、その前に決算を迎えるようにすれば、課税を翌期に繰り延べることが可能となります。
    ご質問の場合、1月、2月に想定外の売上(利益)が計上されるということですので、決算期を3月から12月に変更することで、翌事業年度へ課税を繰り延べることが出来ます。
    また、翌事業年度の節税策としては、役員給与を改定することで対応します。
    現在、役員給与については原則として「定期同額」しか損金算入できません。そのため、期中増額について増額分は損金不算入となってしまいますが、事業年度を変更することにより、役員給与の“仕切り直し”が出来ますので、損金計上可能な増額改定が行えます。

■手続き

事業年度の変更は、変更しようとする決算期末(例では12月末)までに、株主総会(臨時)を開催し「定款変更」の承認を受ける必要があります。(特別決議)
その後、管轄税務署・都道府県税事務所・市町村役場へ株主総会議事録(臨時)の写しを添付し『異動届出書』を提出することとなります。

■変更事業年度の注意点

変更により、その事業年度は1年未満決算となりますので、税務上以下の点に注意する必要があります。


①交際費の枠
中小企業については、年間600万円まではその支出額の90%を損金計上できますが、こちらについても同様に月割計算になります。
②減価償却等
償却額も月割計算しますので当然小さくなります。
また、30万円未満の減価償却資産の損金特例についても、年間上限300万円の制限が月割計算となるため注意が必要です。
③法人税率(軽減税率)
中小企業については、年間800万円以下の所得について軽減税率が適用されますが、この年間800万円についても月割計算となります。
④地方税均等割税額の計算
均等割税額の計算においても、当然月割計算となります。
⑤消費税の判定基準
翌事業年度の予定納税額や、翌々事業年度の課税事業者の判定・簡易課税特例の判定等において、年換算する必要があります。

参考:今後の税制改正動向

毎年税制改正はあるものですが、年度によっては「増税」となる年(項目)と「減税」となる年(項目)と様々です。
改正では、「4月1日以降開始事業年度より適用開始」というパターンが多く、「減税項目」であれば3月決算法人が1番早く適用開始となり、「増税項目」であれば1番遅く適用開始される2月決算法人が有利ということになります。
大きな税制改正がある年は十分に注意して動向に注目すると良いでしょう。

参考:今後の税制改正動向

決算月と聞くと3月を思いうかべられる方がいますが、上記にもあります様に定款により自由に決めることが出来ます。
そこで決算月の基本的な考え方は以下の通りです。

①資金繰りの視点
会社は、決算月日から2か月以内に法人税・地方税・消費税等を納税する必要があります。
これら決算に伴う納税は、会社の資金を圧迫することもありますので、資金繰りの影響を第一に考えるならば、『決算による納税時期』と『資金が少なくなる時期』が重ならないようにするべきです。
資金が少なくなりがちな時期は、夏季・冬季賞与支給時期や7、1月の源泉納税時期(納期の特例適用時)、また季節変動の影響を受けやすい業種等の場合はそれらに加えて売上が少ない時期は避けた方が良いでしょう。

②経営的視点
会社の繁忙期は通常月と比べ利益が予想しにくいため、繁忙期を決算期からずらしておくべきです。
決算までの時間的余裕があれば、仮に繁忙期に予想以上に利益が出たとしても決算までに節税策を考えることができ、逆に、予想よりも業績が落ち込んだとしても立て直す時間が確保できているので安心です。
これとは反対に、敢えて『繁忙期=決算期』とすることで全体的に業績達成させるという考え方もあります。

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